問題38
ソーシャルワークにおける記録に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 出来事や状況に論理的な解釈を付け加えて記述する場合は、叙述体を用いる。
- 時系列に沿って出来事や状況を客観的に記述する場合は、要約体を用いる。
- ケースの進捗状況等のポイントを簡潔に記述する場合は、説明体を用いる。
- 問題ごとに「主観的情報」、「客観的情報」、「アセスメント」、「計画」の項目に沿って記述する方法は、SOAP方式である。
- アセスメント結果、目標、計画を一覧で示す場合は、フェイスシートを用いる。
正答:4
1 × 叙述体は、時系列に沿って客観的な出来事を記述する記録法で、要点のみを記述する「圧縮叙述体」と、詳細まで記述する「過程叙述体」があります。叙述体の場合は、記録者の解釈は記載しません。
2 × 要約体は、状況のポイント(要点)だけを記述する形式です。時系列に沿って記述する場合は、叙述体を使用します。
3 × 説明体は、客観的な事実だけでなく、記録者の解説や解釈なども加えた記録法です。
4 ○ SOAPとは、「主観的情報(Subjective)=主訴」「客観的情報(Objective)=数値など目に見えるもの」「アセスメント(Assessment)」「計画(Plan)」の略称です。SとAに基づいて問題をアセスメントし、支援計画を立案します。
5 × フェイスシートとは、氏名・年齢・性別・家族構成など、クライエントの基本情報を一覧で記録したものです。主に、インテーク面接の際に作成されます。
ポイント
記録法の問題は、医療・看護系をはじめ、福祉士系国家試験でもよく問われる問題ですが、コメディカル以外の分野から受験する方にとっては、混乱しやすい分野です。
また、今回の選択肢には登場しませんでしたが、クライエントとの会話のやりとりをそのまま、文字起こしのように記録する「逐語体」という記録法もあります。「逐語体」は、ケーススタディ(事例検討)やスーパービジョンなどで、面接技術の振り返りに使用されることが多いです。
問題39
事例文を読み、H児童福祉司(ソーシャルワーカー)が行った、この段階におけるグループスーパービジョンの対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
【事例文】
H児童福祉司(ソーシャルワーカー)は、実践経験が15年のベテラン職員である。日頃5人のソーシャルワーカーに対して個別スーパービジョンを行っている。スーパーバイジーらには、複合的な課題をかかえた子どもの支援で行き詰まるという共通の課題がある。H児童福祉司は、この課題に対してグループスーパービジョンを企画し、初回を実施した。
- スーパーバイジーらのグループダイナミックスを活用し、共通の課題を確認して、目的を共有した。
- スーパーバイジーの中から事例発表者を設定し、個別指導を行い、他のスーパーバイジーは傍観した。
- スーパーバイザーが自らのケースを洞察し、その分析結果をスーパーバイジーに発表した。
- 5人のスーパーバイジーの個々人の資質や能力を比較し、それぞれの欠点を指摘した。
- スーパーバイジーらと共に、ベテランソーシャルワーカーの実際の面接を観察し、その場で面接方法を非難した。
正答:1
1 ○ 選択肢のとおりです。グループワークの初回には、メンバー間の顔合わせや、グループの目的の確認などが行われます。
2 × 事例発表は、初回の内容としては不適切です。またグループスーパービジョンですので、他のメンバーからの積極的なフィードバックによる、新しい発見やアイデアの創出が期待されます。
3 × グループスーパービジョンでは、スーパーバイザーはファシリテーターを担います。自らのケースについて語りすぎることは適切ではありません。
4 × スーパーバイジーの欠点を指摘することは心理的安全性を損なうため、不適切です。
5 × 実際の面接場面で、面接方法の非難を行うことは、ベテランソーシャルワーカーとクライエントとの信頼関係を損なう可能性があり不適切です。
ポイント
事例問題は、その場面がどういう設定なのかと、どのような観点で回答を選ばせたいのかを必ずチェックします。
この事例は「共通の課題がある児童福祉司に対するグループスーパービジョン」であることと、「初回」であることが示されています。
「初回」はグループワークにおける「開始期」にあたります。
「開始期」とは、グループのメンバーが初めて出会い、グループとして動き始めるまでを指します。
「開始期」には、自己紹介やグループの目的の明確化と共有、そして緊張をほぐすためのアイスブレイクなどが行われます。
問題40
バイステック(Biestek, F.)が示したケースワークの援助関係についての7つの原則に関する記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 「自己決定の原則」とは、クライエントが問題解決の方向などをソーシャルワーカーに決めて欲しいというニードを持っていると認識することである。
- 「意図的な感情表出の原則」とは、クライエントが自分の抱える問題に関連した感情は隠したいという思いを持っていると認識することである。
- 「個別化の原則」とは、一人ひとりのクライエントを、環境因子や、あるいは人生経験に基づいた独自性を持つ個人であると認識することである。
- 「受容の原則」とは、ソーシャルワーカーがクライエントに受け入れてもらえるように、専門的視点からクライエントに接することである。
- 「統制された情緒的関与の原則」とは、ソーシャルワーカーがクライエントの持つ感情に沿って、自らの感情を表出することである。
正答:3
1 × 「自己決定の原則」は、クライエントの自己決定のことを指しています。ソーシャルワーカーはクライエントの自己決定を促して、尊重します。
2 × 「意図的な感情表出の原則」は、ワーカーはクライエントの自由な感情表出を促し、クライエントの感情表現を大切にすることを指しています。
3 ○ 選択肢のとおりです。「個別化の原則」は、クライエントをパターンやカテゴリで分類せず、かけがえのない個人として捉えることを指します。
4 × 「受容の原則」は、ワーカーがクライエントのあるがままを受け止めることを指します。
5 × 「統制された情緒的関与の原則」は、ワーカーがクライエントとの援助関係の中で抱くさまざまな感情を、自覚し吟味することを指します。感情的な巻き込まれや、逆転移に気づくことで援助関係が破綻することを防ぎます。
ポイント
対人援助の分野では、必ず触れられる「バイステックの7つの原則」に関する出題です。
旧訳版だと日本語として分かりにくいので、下記に新訳版を示します。
- クライエントを個人として捉える (個別化)
- クライエントの感情表現を大切にする (意図的な感情の表出)
- 援助者は自分の感情を自覚して吟味する (統制された情緒的関与)
- 受けとめる (受容)
- クライエントを一方的に非難しない (非審判的態度)
- クライエントの自己決定を促して尊重する (クライエントの自己決定)
- 秘密を保持して信頼感を醸成する (秘密保持)
ケースワークの原則新訳改訂版
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旧訳版で出題されることが多いので、分かりやすい新訳版との対応関係を覚えておきましょう。
「意図的な感情表出」「統制された情緒的関与」「非審判的態度」の3つは非常に出題されやすく、またワーカーとクライエントのどちらの行動について述べているのかが分かりにくい項目なので、自分なりに整理する必要があります。
問題41
事例文を読み、I社会福祉法人に所属するJソーシャルワーカーのネットワーク構築における、この段階での実践として、最も適切なものを1つ選びなさい。
【事例文】
特別養護老人ホーム、保育所、児童養護施設、母子生活支援施設を運営しているI社会福祉法人に所属するJソーシャルワーカーは、地域の町内会有志から、「こども食堂を法人施設内のキッチンがあるホールで行うことができないか」と相談を受けた。さらに地域の消防団有志から、「こども食堂に関心が高まっているので、こども食堂の事業を開始するにはどのようにしたらよいか」という相談を持ちかけられた。Jソーシャルワーカーは、地域におけるネットワーク構築の好機と捉え、所属長に了承を得て、実現に向けた取り組みを進めることとした。
- 町内会、消防団の関係者に対して、作成したこども食堂の事業計画を示す。
- 町内会の会長を、こども食堂の責任者に指名する。
- 法人施設内のホールの空き予定を確認して、こども食堂の実施日を確定する。
- 地域のこども食堂のニーズ、協力者について情報収集をする。
- 法人内の余剰食材を、各事業所から収集してこども食堂で使用する。
正答:4
事例文が長いのですが、問題文で示されている状況を読み取ることが重要です。
テーマは「ソーシャルワーカーのネットワーク構築」
タイミングは「地域の有志から相談があった段階」です。
1 × まだ相談があったのみの段階ですので、事業計画を作成するのは時期尚早です。また、事業計画はソーシャルワーカーが一方的に作成するのではなく、地域の有志と協働して作成することが望ましいです。
2 × 選択肢1と同様、まだ相談があったのみの段階ですので、責任者を決定するのは時期尚早です。実際の運営方針や責任の所在についても、地域の有志と協働しながら決定することが望まれます。
3 × 選択肢1・2と同様、まだ相談があったのみの段階ですので、こども食堂の実施日を確定するのは時期尚早です。また、こども食堂の形態によっては、営業許可や保健所への届出が必要ですので、行政手続面での調整も必要です。
4 ○ 選択肢のとおりです。現時点では、相談があったのみの段階ですので、まずは地域のニーズや資源などを把握するための地域アセスメントを行います。
5 × こちらも他の選択肢と同様、相談があったのみの段階で実施するのは時期尚早です。
ポイント
出題テーマとして「ソーシャルワーカーのネットワーク構築における」と示されていますので、コミュニティワークの観点で問題を捉える必要があります。
コミュニティワークにおけるソーシャルワーカーの役割は、地域課題に取り組むために、住民や関係機関など社会資源をつなぐコーディネーターです。
地域住民同士のつながりや信頼感を醸成し、地域の中で気付きが生まれ、地域の問題解決に取り組めるよう働きかける役割ですので、ソーシャルワーカーが問題解決をしてしまうことは避けなければなりません。
問題42
事例研究の方法に関わる次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 事例研究における研究対象は、質的データであり、量的データは対象としない。
- 事例研究で用いるインシデント・プロセス法は、事例提供者の提示した事例の短い場面から、参加者との質疑応答を通して詳細な状況の理解を目的とする。
- 事例研究で用いる単一事例実験計画法(シングル・システム・デザイン)は、カード状の紙に個々の情報を記し、そのカードをグループ化した情報から、その対応を検討する。
- 事例研究の対象者の選定は、無作為抽出法を行うことが不可欠である。
- 事例研究では、対象となるクライエントが匿名化されていれば、研究協力の同意は不要である。
正答:2
1 × 事例研究では、質的データも量的データも取り扱います。
2 ○ 選択肢のとおりです。インシデントプロセス法では、事例提供者は、短い出来事のみを提示します。他の参加者は問題解決のために必要だと考える内容を質問し、そのやりとりによって事実の整理を行います。
3 × シングル・システム・デザイン(単一事例実験計画法)は、介入前のベースライン期、介入後のインターベンション期を比較することで、介入の効果測定を行う手法です。カード状の紙に個々の情報を記し、カードをグループ化した情報から対応を検討する手法は、KJ法です。
4 × 対象者の選定は必ずしも無作為抽出しなければならないということはなく、研究の目的によっては、有意抽出でも問題ありません。
5 × たとえ匿名化されているとしても、対象となるクライエントには、事前の説明と同意が必要です。
ポイント
事例研究や調査法に関しては、社会福祉士国家試験の「社会福祉調査の基礎」が参考になると思いますが、こども家庭ソーシャルワーカー試験では、おそらく1題程度の出題となることが予想されます。
あまり細かい部分までは問われないとは思うのですが、質的データ・量的データ、縦断調査・横断調査、名義尺度・順序尺度・間隔尺度・順序尺度、構造化面接・半構造化面接・非構造化面接などの違いについて、ざっくり理解しておきましょう。
また、質的データの分析手法としては選択肢にあるもののほかに、グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)もあります。GTAではキーワードをグループ化し、中核的な概念へと絞り込んでいく手法です。分かりにくい手法なのですが、KJ法とともによく使われる用語ですので、実践例なども参考に大枠を理解しておきましょう。
