問題33
「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(注)の本文および注釈に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
- 「解放」とは、人々を孤独や孤立、排除から援護し、社会の構成員として包摂することを主たる目的としている。
- 「社会開発」とは、経済の規模が増大や拡張していることを前提条件としている。
- 「社会変革」とは、法制度の制定や改正を目的としたマクロレベルに特化したものである。
- 「集団的責任」とは、職能団体が所属する会員の違法行為に対して代理で責務を負うものである。
- 「実践」では、国や時代により、歴史的・文化的・政治的・社会経済的な条件によって優先する課題が異なる。
(注)「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」とは、2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。
正答:5
1 × ソーシャルワークの実践の中核である「解放」は、抑圧や特権の構造的原因の探求を通して批判的意識を養い、構造的・個人的障壁の問題に取り組む行動戦略を立てることとされています。
2 × 「社会開発」については、経済成長こそが社会開発の前提条件であるという従来の考え方には賛同しないと記載されています。
3 × 「社会変革」については、変革が必要であれば、ミクロ・メゾ・マクロのどのレベルであっても、介入することが前提であることが示されています。
4 × 「集団的責任」について、「注釈」では2つのことが示されています。
1つは、個人の権利が日常レベルで実現するためには、個人と個人の関係、そしてコミュニティの外部環境(人的環境・物的環境の両方)との関係において責任をもたなければならないということです。
2つ目は、そのことをふまえて、コミュニティの中での互恵的関係を確立することが重要であるということです。
5 ○ 「実践」については、ソーシャルワークが人と環境とが相互作用する接点への介入を任務としていることをふまえ、「実際上何を優先するかは、国や時代により、歴史的・文化的・政治的・社会経済的条件により、多様である」としています。
ポイント
社会福祉士・精神保健福祉士資格者(1号・2号ルート)の方は、国家試験で必ず問われる内容ですので、既に知っている方も多かったのではないでしょうか。
一方、これまでに「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」に触れたことのなかった方にとっては、「注釈」のかなり細かなところを出題していますので、難しかったことと思われます。
ソーシャルワーク専門職は、既存の西洋的価値観(経済成長や技術発展)にとらわれることなく、社会的包摂を目指し、抑圧的社会システムの変革を目指して、人々とともに働く。といった、基本的な理念を押さえておくと、「ソーシャルワーク」科目が理解しやすくなります。
問題34
ソーシャルワークの基盤となる考え方に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- 「多様性の尊重」とは、社会の構成員である人々が、平等に扱われ、経済的保障と秩序の維持を実現することである。
- 「エンパワメント」とは、問題の所在を個人に求め、個人の変化を引き起こすことを目的としている。
- 「ノーマライゼーション」とは、障害者が専門的な施設で生活することを推奨する概念である。
- 「当事者主権」とは、福祉サービスの利用の有無に応じて定められ、専門家が保障内容を決定する概念である。
- 「全人的」とは、人々を生物的、心理的、社会的、文化的、スピリチュアルな側面からとらえる概念である。
正答:5
1 × 「多様性の尊重」とは、基本的人権をベースとしたもので、人々が年齢や性、障害の有無、宗教、国籍等によって区別されず、文化的価値を尊重されることを指します。経済的保障と秩序の維持の実現とは、異なる価値観によるものです。
2 × 「エンパワメント」とは、もともと個人が持っている内在的な力を高め、取り戻すことを指します。問題の所在を個人に求めるのではなく、個人を力を持つ存在と捉えます。
3 × 「ノーマライゼーション」とは、障害者を、障害のない人と区別することなく「あたりまえの生活」をおこなえる社会を実現するための考え方です。専門の施設ではなく、地域で共に生きることを目指します。
4 × 「当事者主権」とは、その人自身がその人のことを決定する権利を持つ主権者であるとする概念です。
障害者権利運動のスローガンである「Nothing About Us Without Us(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)」からも、よく理解できます。
5 ○ 選択肢のとおりです。ホリスティック・アプローチの基盤となる考え方です。
ポイント
ソーシャルワークの基盤となるさまざまな考え方について、用語の意味を問う設問です。
扱っている用語も基本的なものですので、今後受験される方も、本問は必ず獲得できるようにしておきたい設問です。
ソーシャルワークの基本的な立ち位置としては、個人や集団の欠点や問題点に着目するのではなく、個人や集団の長所や強み(ストレングス)に着目し、対象者とともに歩み、良いところを支えて増やすことで、結果的に問題が軽減・解決することを目指します。
この考え方は、事例問題を解く際にも重要で、解決を急ぐあまりに当事者の意向を無視するような選択肢は不正解となります。
問題35
ソーシャルワークの形成過程に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
- トインビー・ホールは、バーネット(Barnett, S.)が初代館長となり、イギリスにおけるセツルメントの拠点となった。
- フレックスナー(Flexner, A.)は、著書『ソーシャルケースワーク 問題解決の過程』において、ケースワーカーが共通に所有する専門的な知識や方法を示した。
- ホリス(Hollis, F.)は、クライエントの自由な意志を尊重し、利用者がソーシャルワーカーの所属する機関の機能を活用し、問題解決をすることを提唱した。
- コノプカ(Konopka, G.)は、グループワークを理論的に体系づけ、「インターグループワーク」を提唱した。
- パールマン(Perlman, H.)は、慈善組織協会での活動の中で、長年にわたる当時のケース記録を分析し、『社会診断』を発刊した。
正答:1
1 ○ 選択肢のとおりです。ロンドンのイーストエンド地区で、バーネット夫妻が設立したトインビー・ホールは、世界初のセツルメント活動の拠点となり、その後の地域福祉活動の基盤となりました。
2 × 『ソーシャルケースワーク 問題解決の過程』の著者は、「問題解決アプローチ」の提唱者パールマンです。フレックスナーは1915年の講演「ソーシャルワークは専門職か?」において、「いまだ専門職ではない」と論じた人物です。
3 × 所属機関の機能を重視するのは、タフトやロビンソンによる「機能主義アプローチ」の特徴です。ホリスは、クライエントを「状況の中の人」としてとらえ、人と環境の双方に介入する「心理社会的アプローチ」を体系化しました。
4 × コノプカは「グループワーク14原則」で知られ、グループワークの発展に寄与した人物です。「インターグループワーク論」を提唱したのはニューステッターですが、インターグループワークは小集団におけるグループワークとは無関係で、地域社会のグループ間の協働を促進し、コミュニティの発展を目指す考え方です。
5 × 慈善組織協会(COS)で活動し、『社会診断』を発刊したのは、リッチモンドです。リッチモンドはこれらの業績により、「ケースワークの母」と呼ばれています。
ポイント
ソーシャルワークの歴史について、基本的な内容を問う問題です。
あまり細かい内容は問われないと想定しますが、保育士試験の「社会福祉」科目レベルの設問は想定したほうがよいでしょう。
セツルメントについては、本問で問われた「トインビー・ホール」のほか、シカゴの「ハル・ハウス(設立者はアダムス)」も頻出事項です。
人物名では、選択肢2のフレックスナー、選択肢4のコノプカはやや難しいですが、選択肢2は「問題解決」→「パールマン」を連想することで除外したい問題です。選択肢4は、「グループワーク」と「インターグループワーク」の混同を狙った出題でした。
問題36
多職種連携及びチームアプローチに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- チームアプローチでは、問題解決に向けて異なる職種間で競いあう。
- チームが機能するためには、メンバーが目標を共有し、メンバー間で連携・協働する。
- マルチディシプリナリ・モデルでは、各職種が独立して自らの専門的な役割を果たす。
- インターディシプリナリ・モデルでは、チームメンバー間で意図的な専門分野を超えた役割分担を行う。
- トランスディシプリナリ・モデルでは、メンバーはチームリーダーの指揮命令にしたがってそれぞれの役割を果たす。
正答:2
1 × チームアプローチは、問題解決を通して、職種間の優劣や勝ち負けを決めるものではありません。
2 ○ 選択肢のとおりです。チームメンバー間で目標を共有することで、個々のメンバーの介入がバラバラになることを防ぎます。
3 × マルチディシプリナリ・モデルは、急性期医療チームなどでみられる形態で、メンバーの役割には階層があり、メンバーはチームリーダーの指揮命令にしたがってそれぞれの役割を果たします。
4 × インターディシプリナリ・モデルは、メンバーの役割は対等で、相互作用が大きいことが特徴ですが、意図的に専門分野を超えた分担は行いません。
5 × トランスディシプリナリ・モデルでは、メンバーの役割が解放され、意図的に専門分野を超えた役割分担が行われます。
ポイント
チームアプローチの問題も、社会福祉士試験等では頻出の設問です。
しかし問題は定型的で、奇抜な選択肢が出題されることも少ないので、各チームアプローチ・モデルの特徴を押さえ、得点源にしたいタイプの設問です。
| モデル名 | 階層性 | 役割分担 |
| マルチディシプリナリ・モデル | 階層性・強、トップダウン型 | 専門領域に固定、相互作用・小 |
| インターディシプリナリ・モデル | 階層性・薄、対等 | 専門職間で連携、相互作用・大 |
| トランスディシプリナリ・モデル | 階層性・なし、対等 | 役割超越的、横断的 |
ディシプリナリ(disciplinary)とは、「専門領域」を指します。
マルチ(multi-)は「複数の」、インター(inter-)は「~間の」「相互」、トランス(trans-)は「超える」「横切る」などの意味をあらわす接頭辞です。
問題37
ソーシャルワークのアプローチに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
- ナラティヴアプローチは、クライエントのドミナントストーリーを変容させることを目指して、オルタナティヴストーリーを作り上げ、人生を再構築するよう促す。
- 行動変容アプローチは、「クライエントこそ専門家である」という無知の姿勢をとる。
- 危機介入アプローチは、抑圧された状態に置かれた人々の権利を回復することを目指す。
- 解決志向アプローチは、ソーシャルスキルトレーニングなどによりクライエントの社会生活上の対処能力を高める。
- エンパワメントアプローチは、行動を学習の結果として捉え、正しく学習することにより問題行動を消去することを目指す。
正答:1
1 ○ 選択肢のとおりです。「ナラティブ」とは「物語」や「語り」を意味する英語です。クライエントにとって固定化した主観的な物語(ドミナント・ストーリー)を、外在化や例外探しなどの手法をつかって、代わりとなる物語(オルタナティブ・ストーリー)に再構成していくアプローチです。
2 × 行動変容アプローチは、クライエントの問題行動を誤学習、未学習と捉えます。新たに適切な行動を学習することで、行動を変容させ問題解決を目指しますが、当事者よりも専門家主導であることが批判されてきました。「クライエントこそ専門家である」は、「ナラティブ・アプローチ」や「解決志向アプローチ」で用いられる考え方です。
3 × 危機介入アプローチは、事故や災害など、危機的状況にあるクライエントに対し、できる限り迅速に、短期間・集中的な介入を行うことで、危機状態を脱するまでを支えるアプローチです。
4 × 解決志向アプローチは、原因探しをしない未来志向の短期療法で、「ミラクル・クエスチョン」「例外探し」「スケーリング・クエスチョン」などの独特の質問により、クライエントの対処能力を最大限に引き出すことを目指すアプローチです。
ソーシャルスキルトレーニングにより対処能力を高めることは、認知行動療法の一種であり、行動変容アプローチに分類されることが多いです。
5 × エンパワメントアプローチは、抑圧された状態にある人々の強みに着目し、人々が本来持っている自尊感情や主体性などの力を回復することを目指すアプローチです。
ポイント
ソーシャルワークのアプローチについて、基本的な内容が問われた設問でした。
特に、新しいタイプのアプローチ(ナラティブ・アプローチ、解決志向アプローチ、エンパワメント・アプローチ)については、出題頻度が高いと思われますので、それぞれのアプローチに特有の用語とセットで理解しておきましょう。
その他の新しいアプローチ法としては具体的な課題に対しスモールステップで取り組む「課題中心アプローチ」や、人と環境の交互作用を重視し、環境調整・社会資源の活用を積極的に行う「エコロジカルアプローチ」もあります。
